前回の「波乱万丈な僕のチルい若い頃の話 – 現実逃避でニューヨークに毎年通う人生」の記事の続きです。
大事故をする前から計画していた社長さんとの中国視察の旅行が退院後についに行けることになった。この旅行では当時中国で買い付けをしたものをオークションや楽天で売ってたので、その商品の買い付けと先輩のオリジナルブランドのサンプルを確認しに行くのが目的だった。だけど、当時は日本と中国が仲が悪く、中国にあるイオンタウンが燃やされたりする事件が起こっているくらい関係性は良くなかった。だけど、この不安定な感じから何か学べそうな気がしたし、当時は恐怖よりも好奇心が勝っていたから旅行には100%行こうと決めていた。
今回の旅行先は「韓国→香港→タイ→中国」の4箇所を回る予定だった。韓国では朝方までモールを色々回って買い付けをして、サウナで仮眠だけ取って、香港経由でタイに入って、タイでも市場で色々買い物をして、香港と中国を数日寄って日本に帰るスケジュールだった。どの話も書き出すと長くなるので、一番衝撃的だった中国の信州 (四川省) の市場の話をする。
入院した時にビジネス雑誌を読むのが習慣になっていて、その中でよく「中国仕入れのビジネスが熱い!」と紹介されていたが、まさかこんな場所でみんな買い付けしてるのかと疑ってしまうほどの中国の汚い市場だった。1フロアーに100件くらい小さなお店が立ち並んでいて、それが8階まで同じ感じで並んでる。そんなビルがカテゴリ別に数棟あるのが中国の信州という場所だ。
色々な市場をグルグル回ってる時に見たことある商品が破格で売られていて、「あー、彼らってこうやって稼いでるのか…」と勉強したり、日本でも爆発的に売れてる某有名シルバーネックレスブランドの偽物が1000本単位で数万円で売られていたりとお金になりそうな物がたくさんあった。ちなみにシルバーアクセサリーは「形」に対して著作権が取れないので全く問題ないって話も興味深かった。他にも帰国直前に購入した商品が故障してて、別に要らないってのもあったので返品に行ったら「お金は返せない!同じ金額のものを持って帰ってくれ」と怒鳴られたのも良い思い出。
だけど、色々あった経験の中で一番印象強いのは中国語を話す黒人さんと出会いだった。
電子系の市場に行った時に中国人の人たちに英語が全く通じなくて、めちゃ困ってたら全く知らない黒人さんが英語で「どうした?助けようか?」と言ってくれた。黒人らしい大きな体つきに威圧感のある雰囲気に始めは驚いたけど、そのあと流暢に中国語を話し始めてさらに驚いた。完全偏見なんだけど黒人が中国語を話してるところを初めて見たこともあってかなり衝撃だった。そのあとお礼を言って立ち去ろうとしたら、映画やドラマでも中々見ない札束の量をカバンの中から出して、商談を始めた。周りを見渡すと値切る外国人とそれに負けずに値下げをしない中国人との戦いが至る所で起こっていた。この時にこの時に日本人には無い「サバイバルする力」を肌で感じた。日本人が忘れかけてる「生きるために必死なオーラ」をそこにいた中国人たちは持っていた。
たった1週間の旅行だったけど本当に素敵な経験をした反面、僕は飛行機の中で日本に帰国したあと何をすればいいのか本気で悩んだ。今回経験したことは人生を変える経験だけど、これが現実社会で今すぐ使える経験かと聞かれるとまた違う。この経験をどうすればいいか飛行機の中で先輩に尋ねると「Kei君、ワクワクする仕事をしないと人間は疲れるから仕事は考えないかんよ」と言われた。
僕はこの言葉の意味を飛行機の中でずっと考え込んでいた。けど、答えなんて出るわけもなく、1年の月日が過ぎた。あの交通事故から1年が経ち、もう僕は25歳になっていた。この1年で色々な経験をして考え方は変わったけど、現実の自分は社会底辺の相変わらずリボ払いに追われていた25歳だった。
「このままでいいのか?またいつ死ぬかわからないぞ?大好きなニューヨークに行かなくていいのか?」と行動に移したい自分もいれば「ちょっと待て、、、もう25歳だぞ…そろそろ現実見ないと歳取ってからマジで大変なるぞ…」と現実の不安に押しつぶされそうな自分もいた。そんな時に行動するきっかけになったのが事故の記憶だった。「人間はいつか予告なしで必ず死ぬ。もし明日死ぬならどうする?」と自分に問いかけるとニューヨークの大好きな光景が頭の中に広がった。
ニューヨークに行かなくては。
この気持ちがわかれば行動は簡単だった。すぐにパソコンを開いて、近々で一番安い航空券の日付を探して、スケジュールを作り始めた。心が決まれば行動は早くなるんだけど、この決断が1週間でニューヨーカーと国際結婚するきっかけになるとは当時は思っていなかった。
(次の記事:出会って1週間でニューヨーカーと結婚した話 – 彼女との衝撃的な出会い)
※この記事は2021/01/28に公開した情報になります。
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