昨日も飲み過ぎた。部屋を見渡すと半分だけ残ってるビール瓶と散らかった服とチャックの空いた鞄が無造作にベットの横に捨ててあった。二日酔いの残りに苦しめられながら体を起こして、財布を見ると1バーツも入ってない。私はどうやって帰ってきたんだろうか?それすらも記憶にはなかった。
時計を見ると18時を過ぎていた。そろそろ化粧をして、仕事に行く準備をしないといけないと思って、シャワーを浴びて目を覚ますことにした。
私の仕事はパタヤの夜を楽しむ男性の欲を満たすために爆音が流れる暗い店の中のお立ち台で踊ったり、今日の夜の相手を探している男性の横について色恋をチラつかせてお酒を奢ってもらったり、あわよくば大金を貰って相手のホテルで一夜を共にするゴーゴーバーの夜の蝶として働いている。こんな生活を気付けばもう4年目になっていた。
4年もこの仕事をしてると最近入った子たちみたいに不特定のお客に愛想を振る舞って、お酒を奢ってもらうみたいなことはしない。そんなふうにお客を捕まえるよりも金払いの良い太客を数人捕まえた方が効率が良いのを知ってるからね。
それにもし金持ちの外人の彼氏を見つけて、結婚なんてすれば周りが羨ましがる「パタヤドリーム」が掴める。今、私は24歳。いつまでこんな仕事ができると思ってるの?って数ヶ月前に数分だけ飲んだお客に言われたけどそんなこと考えないし、何も私のことを知らない人に言われるのは嫌いだ。今は少しでも私を気に入ってくれる金払いの良い客をどう効率的に捕まえて、少しでも多くお金をどう稼ぐかを考えてしまう。
だけど、「パタヤドリーム」と言われるようにそんな客と出会うことなんて滅多にない。ほとんどのお客はタイ語も話せないから意思疎通なんてほとんどできないから恋愛対象にもならない。昨日私を買った60代の日本人もホテルに行くまでの道のりで何度か会話を試みたけど英語もタイ語も話せないからとりあえず彼を腕に手を回して、たまに彼の顔を見て愛想笑いをして、出会って間もない彼に1時間くらいベットの上で抱かれた。私の倍以上年齢が上の男性に抱かれることに抵抗はない、これが私の仕事だから。
終わった後、彼は疲れたらしくベットから起きることなく眠りについていた。私もシャワーを浴びて寝てる彼の頬に軽くキスをしてルームメイトの友達が飲んでるバーに向かった。ホテルの長い階段を降りていると目の前にいつも見てるパタヤの海が見えた。
「君はなんでパタヤに来たんだ?」
そんな言葉が一瞬脳裏をよぎったけど、バーで友達から鬼のような電話が鳴ってたから先を急いだ。今向かってるから待っててと一言だけテキストを送って、バイタクを捕まえ、彼女が飲んでるバーに向かった。
バイクの後ろに乗りながら海を見てたらコムローイを楽しんでる人たちの姿が見えた。昔はパタヤの空もランタンがたくさん飛んでいたけど、数年前から火事の原因になるってことで中止になり、今は海にお供え物と蝋燭に火をつけて流す形に変わった。もうあの綺麗な空をパタヤで見ることはできないけど、4年前に初めてパタヤに来た時の空は綺麗だったのを覚えてるし、あの時もバイクの後ろに乗って空を見てた気がする。そんな思い出に浸ろうとしたけど、バイクはそんな気持ちを無視してアクセル全開で煌びやかで眩しいバービアがある道に入って行った。
バーに到着すると空のウィスキーが2本と今卸したばかりのウィスキーが机に置かれていて、そこには3人の女性と韓国人らしき男性が2人座っていた。この友達もゴーゴーバーで働いてる子で友達の横にいる男性はさっきお店で彼女の横に座ってた人だとすぐに気付いた。彼は私の顔を見て「おっ、君も飲むか?飲め!飲め!」とウィスキーの入ったショットを渡してきた。日本人に比べて韓国人の男性の金払いの良さは気持ちが良いから気にしないで何杯も飲んだ。酔った私はゴーゴーバーでは滅多に踊らないダンスを踊ったり、吐きそうになりながらみんなで乾杯して飲み続けた。
すると知っているスタッフが私に「もう閉店です」と声をかけてきた。机の上には正確には覚えてないけど4本の空のウィスキーボトルが置いてあったと思う。泥酔状態だけど、毎日飲んでる私たちからすると限界を超えてからが本番。まだどこかで飲まないか友達に尋ねた。
「ちょっとみんなでカラオケ行かない?」
友達が横にいた韓国人の彼の腕にしがみついてた言った。彼はカラオケの意味をわかってなさそうだったけど二つ返事でOKをして、近くにいたバイタクを捕まえに千鳥足で走っていった。私もカラオケは久しぶりだったし、まだ飲めることに幸せを感じていた。
バイクはうるさい繁華街を抜けて、路地という路地を曲がって暗い道の中を走っていた。私の後ろにしがみついてる彼の友達が「どこに行くの?」と何度も聞いてきたけど、説明するだけ面倒だったから英語がわからないふりをして目を瞑って少し冷たい風が顔に当てながら、酔いをなんとか覚まそうとした。
10分ほど走ると開けた場所にポツンとクラブらしき建物が見えた。あそこが今から行くカラオケ屋だ。バイタクを降りると友達が韓国人の腕を引っ張って、建物の中に消えていった。私の後ろにいた彼の友達は少し不安そうな顔をしてたけど、もうここまで来たなら行くしかないよと一声かけて手を引っ張って彼女の後ろ姿を追った。
店内に入るとパッと見はクラブっぽいけど、30名はいるだろうスーツを着たタイ人男性がフロアーにいる女性と話していた。彼らは知らないだろうけどパタヤでカラオケと言ったらホストクラブのことをいう。到着してから数分後には彼らも何も知らずにホストクラブに連れてかれたことに気付いていた。
私の友達は自分のお金じゃないことをいいことにいつも指名してるホストを横に呼んで、テキーラ代を彼にせびって奢っていた。彼も友達に好意があるから嫌われたくない一心で奢っていたし、彼を見て友達が調子に乗って机の上に置いてあったウィスキーのボトルも開けて、人数分のショットグラスを並べて乾杯を始めた。
もうこの頃にはお酒が入り過ぎて、正直覚えてない。どこで落ちたかもわからないけど気が付いたらホストクラブの中にあるカラオケボックスのソファーで横になっていて、重たいまぶたを開けるとタイ人ホストの歌声と彼らにうっとりしてる友達の顔とタイ語もわからない韓国人の男性がどうしていいかわからない顔で水を飲んでいた。
時計を見ると朝5時。もうカラオケ屋は閉店してたけど、友達は常連だから閉店してもカラオケが許されるお客だった。そういえば韓国人の友達の友達は?と聞くと私が酔って潰れてる間に帰ったらしい。
ホストたちが酔っ払いの私たちをエスコートしてカラオケ屋を出て、バイタクで家に帰る巡撫をしていた。バイタクを待っている時に友達と韓国人の男性がちょっと言い合いになってて、後で話を聞くと彼が持っていたお金を私たちが全部使ってしまったらしい。普通の人なら怒るかもしれないけど、タイではお金はある人が払えばいいって考えだからどれだけ怒られても彼女は別に悪いと思ってないし、お礼をいう必要もない。
それから友達と一緒にバイタクに乗って家まで一緒に送ってもらったらしいけど、彼女もお金がなくて私がバイタク代とコンビニで買ったビール代を出したらしいけど、もしかしたらその時に気分よく財布に入ってたお金を全部使ったかもしれない。まぁ酔っ払いの記憶なんてないに等しいから真相はわからないけど、財布の中にお金が1バーツもないのは現実だけはしっかり残ってた。
「飲み過ぎて気持ち悪いけど、結構飲めたから楽しかった」
そんなことを考えながら髪を乾かして、メイクをして、時計を見ると19時にを過ぎようとしていた。もうすぐ仕事の時間だ。今日は私の太客が遊びに来るって言ってたから今日も飲むだろうし、仕事が終わってからもまたどこかに誰かと飲みに行く気がする。
私含め、何歳までパタヤの夜の蝶として飲めるかはわからないけど、今が楽しければそれでいい。だから、今日も私たちは記憶がなくなるまで飲みに煌びやかなあの場所に今日もまた行く。これが私の仕事だから。
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